毎年、冬の季節にニュースで『暴風雪警報』という言葉を耳にするたびに思いだすことがあります。もう今から10年前ぐらいの出来事です。月日は流れましたが、ぞっとするような記憶は鮮明に脳裏に焼き付いています。
それは、北海道に遊びに来た友人と一緒に美瑛へ観光をした帰り道のこと。
季節は真冬、2月でした。
美瑛で一面の雪景色を堪能。ところが…
振り返れば、計画からして無理があったのだと思います。
友人はわたしの家に泊まっていて、早朝に車で美瑛方面へ出発しました。
私と夫と友人の楽しい3人旅。天気は抜けるような晴天で一面の雪景色がキラキラしてきれいで。
美味しいものを食べて、美瑛方面でのんびり景色を楽しみながら、まっさらな雪に人型ができるようにダイブしたり…。
一通り観光して、美瑛を出発したのは確か13時過ぎごろ。
友人はその日の夜遅い時間のフライトで東京に戻る予定。
高速で新千歳空港まで車で行くことにしました。
帰る時間に空を見上げると、そこにはもう青い空はみつかりません。空はどんよりと厚い雲に覆われていました。
美瑛を出発するころには雪が降り始めていました。
激しく雪が降り始め、高速は通行止めの情報も
美瑛方面から高速道路にでるまでは芦別市というところを抜けて少し山道を走ります。
この時点で雪は激しい吹雪。ヘッドライトをつけないと10メートル先の車も見えないぐらいの視界不良でした。
携帯で調べたのか、ラジオで聞いたのか、さらに悪いニュースが飛び込みます。
利用しようと思っていた高速道路の区間が全線通行止めということもわかりました。
事故などではなく、悪天候での通行止めです。
高速道路と並走して国道12号線が通っているので、国道から帰る道を選びました。
全く前が見えなくなり、一瞬で…
なんとか山道を抜け国道までたどり着きました。国道12号線は大きな道で、片側2~3車線あります。しかし、国道に出たころには視界がわずか数メートル。
前の車のバックライトがわずかに見えるぐらい。車はもちろんのろのろ運転。
この時点で、友人の飛行機の時間に間に合うかは不穏な気配。
そして、前のトラックが動かなくなりました…。
渋滞??
そうこうしているうちに、動けなくなりました。
前の車が再び動きだすのを待っているほんの少しの時間で、自分の車も雪に埋まりました。猛吹雪で車が立ち往生したのです。
激しい吹雪ですべての視界を奪われました。
何も見えないというのはまさにこの状態。
昼間のはずなのに、一面まっしろ。
方向感覚もなくなり、自分が重力に従ってちゃんと座っているのかどうかもわからないような状態。
いうなれば、地面と天井がどっちだか、わからなくなるような感覚に襲われたのです。
車が宙に浮いているように感じ、乗り物酔いはあまりしませんが、窓の外を見ていたら気持ちが悪くなりそうでした。
『ホワイトアウト』という状態です。
道路上に雪は激しく降り積もり、車のドアが開かないくらいまで積もっていました。
猛吹雪だったので、吹き溜まりができている感じです。
一面灰色の視界にぼんやりとライトが見えるので、周りの車も同じ状態になっているということだけがわかりました。
ひたすら救助を待つ…
猛吹雪で車が立ち往生して数時間。
JAFに電話をしましたが、「いつになるかわからない」との返事でした。
そうですね、除雪が入らないと救助の車も来られません。
友人は飛行機会社に電話をしてフライトを翌日に変更してもらいました。特に料金が発生することなく、運よく変更できたので不幸中の幸いでした。
わたしは、次の日は会社でした。しかも、よりによって早朝に出社する当番の日。
間に合わないと思い、会社の先輩に電話をして担当を変わっていただいたのを覚えています。
状況を先輩に話すと、
「エンジンを切って、マフラーが埋もれていないか確認して!」といわれました。
そうです。
このときはあまりよく知りませんでしたが、吹雪で立ち往生した車内で一番怖いのは、寒さではなく、
「マフラーが雪に埋もれて、車内に逃げ込んでくる排ガスによる窒息」だったのです。
仕事を変わっていただいた先輩には、仕事だけでなく命を救われた思いをしました。(その節はお世話になりました)
温泉に立ち寄ろうと思っていたので、バスタオルがたくさんあったこと、防寒の服を着ていたので寒さはしのぐことができました。
車内で一夜を過ごす…
除雪車が来たのは、深夜だったと思います。
その間、トイレに行きたくなるという緊急事態もありましたが…(省略!)
除雪車が来た時もまだ雪は降っていましたが、風は幾分収まり、少しは周りが見渡せる状態になりました。
除雪車が雪をよけていく様子、涙が出るほどかっこよかったです。
「ああー、助かった!!」 と心から思った瞬間です。
トラックなどはまだ動けない様子でしたが、我が家の車は除雪が入り、動けるようになりました。
ところが…、ワイパーが作動しない!!
猛吹雪に耐えられずワイパーが完全に壊れてしまったようです。。
まだ吹雪は続いている状態でワイパーなしでは、前が見えない状態。
とにかく、近くのコンビニまでは行きたかったので、助手席から雪かき用の棒で雪を払いながらノロノロと車を進ませました。
運よくコンビニはすぐ近くにありました。
視界ゼロでまわりに助けを呼べない状態だと思っていましたが、立ち往生した場所は、民家も立ち並び、コンビニや道の駅もすぐ近くの場所だったのです。
視界ゼロでなにもかも見えなかったのです!
この時に食べたカップラーメンの味がなんと美味しかったことか!
結局、コンビニの駐車場でJAFを待つことにしました。
道路は除雪待ちで大渋滞、まだ埋もれて立ち往生している車がところどころにいる感じでした。
朝になりました。
いつの間にか雪はやみ、風もやみ、綺麗な朝焼けと青空が顔をのぞかせ始めていました。
まるで何もなかったようにいつもの空が広がっていました。
札幌には早朝にやっと帰り着きました。
猛吹雪で車が立ち往生…反省と教訓
今回の出来事での反省から、雪国の車でのお出かけの注意点を整理しました。
冬の北海道の車でのお出かけ前チェック
- お出かけ前に天気予報を必ずチェックする
- 天気が悪いときは出かけない。不要不急の外出を避ける
- 天気は変わりやすい。状況に応じて臨機応変に対応できるように、時間には余裕を持って
- 車内に積んでおいたほうがいいもの
- スコップ
- 毛布
- 食料、飲料水
- ロープ
吹雪で立ち往生してしまったとき
- 立ち往生する前に危険を感じたら安全な場所に避難する(コンビニ、道の駅、ガソリンスタンド)
- マフラーの排気口付近の除雪を頻繁に。二酸化炭素中毒を防ぐ
- ハザードランプをつけて後ろの車に知らせる
- 排ガスによる一酸化炭素(CO)中毒を招かないよう注意しながら車内にとどまり、救助を待つのが基本
- 窓を少しでも開けて換気する
ちなみに、この日の出来事は翌日の新聞の一面記事になっていました。
大自然を前にしては人間のちっぽけさを目の当たりにした出来事でもあります。
準備と計画、用意が大切だと思いました。
今回のしょうラヂオ。
ホワイトアウト、方向感覚が奪われていく感覚がとても恐ろしかったです。
子どもがいないときでよかった…とも。今思い返すだけで、ぞっとします。
『備えあれば患いなし』反省します。